青い衝撃“ブルーインパルス”に臨む!航空祭を撮るのに必要な「機材」と「心構え」

雑記

動体撮影を行うのなら憧れの被写体の一つ、航空機の「ブルーインパルス」。平成29年度(2017年度)も埼玉県入間基地で行われる「入間航空祭」の時期が迫ってまいりました。

今回は昨年度の私の初挑戦の経験をもとに、機材や実際の撮影についてご紹介してみようとと思います。

⇒ブルーインパルスの本年度の飛行展示予定の一覧はこちらの航空自衛隊広報サイトをご覧ください。

 

入間航空祭(平成28年度)の模様

 

■西武池袋線“稲荷山公園駅”よりアクセス

会場である“入間基地”に向かうは、西武池袋線の“稲荷山公園駅”より歩いてすぐとなります。ですが、会場までの道中は大変な混雑となりますので、押し合わず、順番を守ってずらずらと落ち着いて歩いてまいりましょう。自衛隊の肩が特設のお立ち台(?)より会場までの案内と皆さんが落ち着いてトラブルなく会場に辿り着けるようユーモアに溢れる誘導を行ってくださっていました。

ようやく辿りついた会場内。場内には入り口付近にまとまって飲食物や記念品のようなものの販売、仮設トイレなども多数用意されておりますので、先に用事があれば済ませておいた方が好ましいです。

 

■飛行展示の開始が迫る場内の混雑図

広々とした場内には人がどんどん押し寄せます。余裕を持って来場しておけば場所取りは自由度がありますが、一度落ち着いた後に場所の変更が効くような状態ではありませんのでご注意を。

 

Tips.1 ブルーインパルスの撮影におすすめのデジタル一眼カメラ・レンズについて

ブルーインパルスの撮影にはやはりそれなりにしっかりした“動体撮影性能”を備えたカメラがおすすめです。また、交換レンズについても通常の画角よりもより望遠域まで幅広くカバーしているものの方があらゆる距離感にも対応できて安心です。

画質についてはどのような撮影でもよりセンサーサイズの大きい“35mm判フルサイズ”モデルが有利ではありますが、フルサイズ一眼でブルーインパルスを満足に撮影するためには「500〜600mm」の焦点域をカバーしたレンズがあった方が良いです。逆にそれ未満(例えば100-400mmのようなレンズをフルサイズ使用)であると、遠くで飛行中の機体はほとんど手が出ない、あるいは撮ってから大幅なトリミングをすることになりがちです。

それでは具体的に挙げていきます。

 

・デジタル一眼レフカメラの場合

APS-Cセンサーを搭載した高速連写・高性能AFモデルがおすすめです。

どちらもAPS-Cサイズで「2000万画素」クラスの解像度のセンサーと、10コマ/秒の高速連写・高精度な測距性能を備えたハイエンドモデルです。

今回掲載している作例は超広角レンズで引きの絵ものを除き、全てNikon D500で撮影をしております。初めての撮影にも関わらず、機材の性能がかなり助けとなりそれなりの撮れ高を確保することができたと実感しています。

 

・ミラーレス一眼の場合

ミラーレス一眼であっても同じく高速連写、測距性能を重視して選ぶのが最良の結果への近道です。今であればOLYMPUSの「OM-D E-M1 Mark II」はミラーレス一眼の常識を覆したほどの優れたAF性能と高速連写を備えており、被写体にしっかりと食らいつきながらも“18コマ/秒”での超高速連写が可能です。

しかもマイクロフォーサーズ規格の利点として長焦点の望遠レンズ“M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO”が非常に小型であり、以下の35mm判換算で600mm相当の画角となる高画質な単焦点レンズでもわずか2.1kgと、大型機材の半分の重量で振り回すことが可能です。

 

 

・交換レンズについて

レンズについては、最近各社から出てきた“超望遠ズームレンズ”を中心におすすめの製品をご紹介します。

35mm判フルサイズモデルで使用しても500〜600mm、APS-Cモデルで使用すれば35mm判換算で750〜900mm相当となるような超望遠ズームレンズが一眼レフカメラ向けの製品としては充実してきています。

画質最優先でいくのであれば“超望遠単焦点レンズ”という手段もありますが、大変高価でフレーミングの精度も求められますのでかなり上級者向けでしょう。

手持ちのレンズに“テレコンバーター(エクステンダー)”を使用するという手ももちろんありますね。「余計な出費は避けたい」など、何を重視するかによりますが、撮影してみた実感として遠方から航空機を狙うには、通常の撮影では考えられないくらいに「大気の影響を受ける」点が挙げられます。そのため、できるだけ解像力低下を防ぐためにある程度は絞り込んで撮影することを念頭に置きたいため、単焦点レンズ以外のテレコン使用は避けた方が好ましいです。

 

ブルーインパルス以外の演目


飛行展示はいきなり本番の“ブルーインパルス”からではなく、比較的飛行速度の緩やかなその他の航空機の演目から始まります。私のように初めての撮影に臨まれる方は、まずこれらで自分の撮影の慣らし運転をしておいた方が良いです。

 

Tips.2 慣らし運転は“画角”とフレーミングイメージを掴むことを重視

これらの機体には動体撮影が極端に苦手な一眼でなければ、まず対応できるでしょう。先ほどおすすめしたような超望遠域までカバーしたようなズームレンズであれば、編隊飛行からこういったクローズアップまで柔軟に対応が可能です。

ただ、このスピードに慣れてしまって本番の“ブルーインパルスの速さ”に腰を抜かしかけた私の失敗経験から、ブルーインパルス以外の演目ではどれくらいの距離にいればこれくらいの焦点距離で撮るといった「画角のイメージ」を掴むことと、「構図の作り方(フレーミング)」に重点を置いた方が、後に活きると感じます。

 

パラシュートでの降下など、以外に見せ場は多くやってきますがメディアの容量の余裕があまりなければ撮り過ぎも禁物です。なぜならブルーインパルスは比じゃないくらいにスピードが速いため、必然的に歩留まりを稼ぐために連写を多用することになります。

もちろん一番の理想は容量に余裕のあるメモリーカードを用意し、常に全力を尽くすことです。

 

■T-4 “レッドドルフィン”

航空機に明るくないのですが、こちらも人気の機体でレアなものだそうです。白地に青のブルーインパルスもT-4で同型機となります。プロペラ機と比べれば随分速度も速いため、こちらも撮影の慣らしにはもってこい。

 

■ヴェイパー現象

こちらは“ヴェイパー(ベイパー)”と呼ばれ、翼端等からこぼれた空気が急減圧されることにより、空気中に含まれる水分が凝結作用により発生する現象だそうです。

 

■T-4のメインカラー機

量産されているカラーリングはグレー地に翼の先端がオレンジの塗装です。こういったカラーリングも渋くて素人ながらに素直にかっこいいと思います。

 

■カラー混成の編隊飛行

先ほどの“レッドドルフィン”とグレーカラーの機体の編隊飛行です。量産機と、専用カラー…ガンダムに出てくるモビルスーツもこういったところからカラーリングの着想を得ているんですね〜。

 

 

T-4 “ブルーインパルス”の曲芸飛行


■スローロール

ソロの演目。単機でゆっくりとロールしながら会場を横切っていきます。絞りはF8、シャッタスピードは1/4000とかなり高速シャッターの部類ではありますが、実際に拡大するとシャープネスの不足を感じてしまいます。これは550mm(35mm判換算825mm相当)と狭い画角でクローズアップしているため、相当な引き寄せ効果で撮っています。そのため本来は距離相応に存在する大気の層の影響を大きく受けているためでしょう。

 

■ロールオンテイクオフ

最後に離陸した一機がバレルロールを行なっている模様。現像時にコントラストを引き締めて雲のディティールを強調してあげると、単機でも非常に絵になります。

 

■コークスクリュー

まだまだスピードに反応しきれず、魅力的な部分が全然収められておりません。

 

Tips.3 ブルーインパルスのスピード感

真上を通過する編隊飛行を慌てて連写で追った失敗カットです。

失敗1:遠くから迫ってきた際に頭上を通過することがわからず、ズーミングで引き損ねた

失敗2:スピードが速過ぎるうえに近くを通過したため、秒間10コマの高速連写でも上の写真の通り「一瞬の出来事」で終わった

 

このように、プログラムの下調べが甘いな私のような者には中々ハードルの高い被写体です。正直この辺の時間帯はただただ翻弄されて笑うしかないレベル。ただ大丈夫です、そのうち慣れて冷静に対応できるようになりますので安心して楽しみましょう。

 

■ダイヤモンドフォーメーション

 

ランディングギアを出したまま着陸灯を点灯させて飛行するフォーメーション。正面から捉えると非常に絵になるシーンです。

 

Tips.4 オートフォーカスの追従設定

上には成功したカットを載せていますが、連続撮影したうちに一枚このようなピント抜けのカットがありました。

どうやらD500のAFロックオン設定を速度変化の激しい被写体に対応できるように「被写体の動き:ランダム」に設定していたのが原因でした。実際には演目中のブルーインパルスの曲芸の動きによるスピードの変化自体はないわけではないですが、飛んでいる最中で急に速度は急激に変わるのは稀です。(縦の動きが伴う場合くらい)

背景は空で、被写体は機体とわかりやすいため、AFロックオン(追従設定)は食いつきが強い設定にしてあげた方が安定してきます。

 

■デルタループ

とにかく絵になるこのシーン。長く引いたスモークが青空に映えます。

 

■その他

 

 

Tips.5 サブ機の用意

超望遠レンズ一辺倒に見える航空祭ですが、広角レンズでしか撮れない演目も存在するのが悩ましいです。

■スタークロス

 

■バーティカルキューピッド

こういった演目の時だけレンズ交換をして…というのは私の感覚では不可能に近いと思います。よっぽど他のシャッターチャンスを我慢するか、あるいはプログラムを完全網羅して臨むのならば、といった具合です。とはいえ航空祭の会場は風も吹き荒れますので、レンズ交換をした際の“ゴミの混入”もかなりネックになってきます。

私はサブ機として超広角レンズを装着したNikon D810を持ち込んで対応しました。

レンズ交換をせずとも場内で連写メインで撮影を終えたカメラには、二台とも細かいチリがかなりファインダー内に混入しておりました。撮影後すぐにサービスセンターでファインダーとセンサークリーニングに預けたくらいです。

上記の理由から、できれば広角で撮影ができるサブ機を用意すると後悔なく全力で撮影に臨めます。

 

■ワイド・トゥー・デルタ・ループ(お気に入りの一枚)

とにかくダイナミックでお気に入りの一枚。上空を翔け上がってからの急降下により縦横無尽、迫力ある演目です。

Tips.6 ワイド・トゥー・デルタ・ループ実際のカット数

上の演目の撮影には実際以下の通りずっと連写をして撮影しておりました。私のような不精な人間はプログラムを調べて下準備をすることを怠りがちです。

そのため、高速連写の可能なカメラを使用することによって「当たりカット」を確実に押さえることを目指します。

(下の画像はクリックすればスライドショーで開きます)

 

Tips.7 機材に助けてもらうという心構えもアリ?

上の連写ギャラリーですがなかなかの無駄うちの多さですね…。ですが、今回メインで使用したNikon D500はハイスピード規格のメモリーカード「XQDカード」を採用しており、RAWで最大200コマの連続撮影が可能です。撮影中は本当にバッファ詰まりなど一切気にすることなく撮影に集中できました。

ボディはNikon D500に、長尺のレンズを安定してホールドするためにバッテリーグリップ MB-D17を装備。レンズはTAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2 A022です。

カメラの性能は言い尽くしておりますが、圧倒的な連続撮影コマ数と高精度、かつ高密度な測距点を活かした動体捕捉能力の高さ。今でこそ10コマ/秒の連写速度はミラーレス一眼に追い越されてしまってもおりますが、やはりプロカメラマンも使用するような動体撮影機だけあって信頼性抜群の機材でした。

若干ハードルの高い被写体だからこそ、高性能なカメラに助けてもらうという考え方も合理的ではないでしょうか。私は昨年の撮影で、それを大いに実感した次第です。

皆さんもぜひブルーインパルスの撮影にチャレンジしてみてください。

 

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