FUJIFILMのような写真が撮れるSONY αを妄想した人には刺さるカメラ「FUJIFILM X-H2S」

レビュー

X-H2Sに至るまで

2020〜2021年頃はSONYのαシリーズを抑えのシステムとして活用していて、「α9」→「α7R IV」と乗り継いでいました。

当時はまだ各社のミラーレス一眼の中でもSONY αシリーズのフルサイズモデルは頭二つくらい撮影性能が抜きん出た印象で、被写体のトラッキングや瞳AFなどに加えてレンズシステムも十分に拡充されており、「αシリーズを使っておけば間違いない」くらいの安心感がありました。

Zeissレンズや、G Masterレンズなど、高性能で間違いのないレンズも多く、システムを整えながら産まれたばかりの息子を撮って楽しんでいました。ただ、「簡単に撮れ過ぎて味気ない」というような贅沢な悩みも感じるようになっていました。

今思えば、息子がハイハイ移動やつかまり立ちをする程度の頃だったので、もっと動き回れるような年頃であれば味気なさは感じなかったのかもしれません。この頃は瞳を追従して構図だけ微調整して撮り続ければ思ったような写真が簡単に撮れるんですから。

でも一番「おや?」と感じたのは、α9やα7R IVを持って街中で撮影をしていたときの感覚です。なんというか、「いいな」と感じたシーンや被写体にカメラを向けても、「うーん…」とシャッターを切らずに終えてしまうことが増えてしまいました。

ミラーレス一眼のEVFは撮影結果を常にシミュレーションしてくれていますが、当然ながらファインダー内に描かれる画はそのカメラの持つ画作りに依存します。もしそのカメラの画作り自体が好みではなかったら…。ファインダーを覗いた時点で「撮れたとしてもこんな感じか…」としっくりこないことがあるのではないでしょうか。(画作りを反映しないナチュラル表示機能を使えばいいかというと、そういう感じでもないです。EVFの利点のひとつを失うので、それだったら光学ファインダーのカメラで撮りたいです。)

もちろん、撮影している時点ではあくまで素材として、RAW現像→レタッチと作品として自分で追い込んでいくようなタイプの方はその限りではないと思います。

SONYのαシリーズはカメラ内RAW現像機能もなく、抜群の撮影性能を持ったカメラでキャプチャーしたデータを、PCなどでRAW現像するような割切り思想だと考えています。それはそれで潔いと思うのですが、近年のカメラはバッファメモリーの余裕や、連写速度の向上、メディア自体の記録容量の増加によって撮影枚数がだんたんと増える傾向にあります。そのため撮影後のセレクトやRAW現像作業が億劫に感じられる人もいるのではないでしょうか?僕はそんな無精な人間のひとりです。

SONY以外で使用しているカメラシステムの中で、PENTAXのカメラはカスタムイメージの調整とホワイトバランスの掛け合わせによってカメラの画作りでしっくりくるところまで追い込めますし、FUJIFILMのカメラはフィルムシミュレーションとグレインエフェクトやカラークローム・エフェクト、トーン設定によって調整幅が広いです。FUJIFILMのフィルムシミュレーションのユーザー設定は「X WEEKLY」をはじめとした海外サイトに参考例が充実しているので、それを試してみるのも楽しいです。フィルムっぽい仕上がりを追求することで、デジタル世代の僕にとって常に意外性と新鮮味を与えてくれます。

昔の妄想

「FUJIFILM X-T4」「SONY α7R IV」を併用していた頃にふとこんなことを思いました。

「カメラはSONYでいいんだけど、撮った写真はFUJIFILMにならないかぁ…」

もちろん撮った画像を追い込んでフィルム風に仕上げれば良いのですが、そういうことではありません。シャッターを切った時点でそうなっていることが重要なんです。

X-H2Sとの出会い

そんな妄想をしたことも忘れかけていた2022年。FUJIFILMから「X-H2S」が発表されました。僕も多くのXシリーズファンと同じくFUJIFILMのカメラの魅力のひとつはアナログ操作系も備えていることだと思っていたので、当初はスルーしていました。

しかしながら、会社帰りに池袋のビックカメラで「X-H2S」を少しいじってみてビビッときてしまいました。

「これは…SONYが作ったみたいなXシリーズだ!笑」

ただ、購入するにも懐事情の問題が…。これまで好き勝手に機材を購入しまくっていた僕ですが、すべての罪を洗いざらい妻に話し、お小遣い制に移行し禊ぐことに。お小遣い制ですから、カメラなんておいそれと買えるはずがありません。

そこで伝家の宝刀「下取交換」によって、マップカメラにて「X-T4」「X-Pro3」を手放すことによってX-H2Sを入手することができました。

XF35mmF1.4 R

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 35mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/60s
  • ISO: 1600

 

XF35mmF1.4 R

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 35mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/5000s
  • ISO: 640

 

XF35mmF1.4 R

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 35mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/2900s
  • ISO: 800

 

XF16-55mmF2.8 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 42.7mm
  • Aperture: ƒ/2.8
  • Shutter speed: 1/750s
  • ISO: 320

 

XF35mmF1.4 R

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 35mm
  • Aperture: ƒ/5
  • Shutter speed: 1/1250s
  • ISO: 800

 

XF16-55mmF2.8 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 55mm
  • Aperture: ƒ/2.8
  • Shutter speed: 1/1250s
  • ISO: 640

これまではカメラボディとのアンバランスさから動画専用レンズと化していた「XF16-55mmF2.8 R LM WR」ですが、持ち出す頻度が上がってきました。

 

XF16-55mmF2.8 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 40.1mm
  • Aperture: ƒ/2.8
  • Shutter speed: 1/120s
  • ISO: 640

FUJIFILMの画は何気ないものでも印象的に見せてくれる楽しさがありますね。

実際に使ってみてX-H2Sに思うこと

良かったところ

・写真撮影・動画撮影共に死角なし
全体的なキビキビ感、これまでのXシリーズのAFとは一線を画す“動体撮影に強い”とされるミラーレス一眼に迫るAF性能、明らかに進化した顔認識・瞳AF、それに動物や乗り物といった被写体認識も豊富に備えています。そして、動画機としても間違いないと思わせてくれる性能・機能がずらり。

・ユーザーインターフェイス
一般的なカメラメーカーに寄せた感じのユーザーインターフェイスについては、純粋なXシリーズユーザーからしたら戸惑うかもしれませんが、僕はいろんなカメラメーカーの機材を使い分けてきたのでそんなに気になりません。

・見やすいEVF
576万ドットに高精細化されたEVFはとても見やすく、EVF嫌いの僕も慣れれば使い心地の良いレベルに感じられました。SONYのα7R IVも同じスペックでしたが、SONYはAFの演算や、省電力などにウェイトを置いているためかAF測距中などはまだまだジャギー感が感じられるものでしたので、これはありがたいです。(NikonのZシリーズのEVFは表示の自然さだけでなく、AFや絞り作動時のちらつきも極力抑えられていてさらに良いというので気になります)

・質感の高さ
これまでのXシリーズは価格もそこそこ低価格ゆえかカチャカチャとしたチープさを感じるところもありました。X-H2Sではダイヤルの操作感触や本体の剛性感など、とても良くなりました。

・グリップのしやすさ
大型のグリップになったことにより、スマートさはなくなりましたが「XF16-55mm F2.8 R LM WR」のようなレンズでもバランスで負けることがなく、相性が良くなったのを感じます。

気になったところ

・動画モードへの切り替え
早速インタビュー映像系の収録仕事でも使ってみましたが、「X-H2S」のユーザーインターフェイスは動画撮影でも使いやすかったです。でも「X-T4」にあったようなPHOTO/MOVIEの切り替えレバーを備えてくれるともっと良かったですね。動画だけ撮る時は良いんですが、モードダイヤルをMOVIEポジション切り替える必要があるのは、家族で出かけているときに写真撮影と動画撮影を頻繁に切り替える際に不便でした。写真撮影中もシャッターボタン脇のRECボタンを押せばシームレスに動画撮影が行えるんですが、その時は自動露出での動画撮影となるため滅多に使用しません。

・カスタム登録・呼び出し
「X-T4」や「X-Pro3」では画作り系の設定だけに限られていたユーザー設定のカスタム登録が、ドライブやAF設定などさまざまな撮影設定も含めたカスタム登録としてモードダイヤルのC1〜C7のポジションに設定されるようになったのには違和感をおぼえました。
おそらく、CanonやNikonのハイエンド機のカスタム設定が撮影シーンごとの設定パターンを一気に呼び出すものだったので、プロやハイアマチュアの要望を受けてこちらの仕様に寄せたのだろうとは想像できます。
でも、カスタムした画作りのパターンを瞬時に呼び出せるのは、なかなか使い勝手が良かったんですけどね…。ここはカスタム登録の範囲か、呼び出される設定の適用範囲を従来の「画作り関連」だけに限定する設定なども追加されると尚嬉しいのですが。

・X-H2の存在
高精細画質がウリの「X-H2」が時間差で登場。8K動画が撮れること自体は実用面ではあまり求めませんが、デジタルクロップで単焦点レンズでも画角変更の自由度が高いのが羨ましいです。加えて電子シャッターで1/180,000の高速シャッターが切れるのが本当に羨ましい…。X-H2が欲しいというよりは、X-H2Sでこれらの機能や性能がカバーされていたら良かったなという話しです。

困ったこと

・バグがある
少なくとも二つ、設定状況によって必ず再現するバグを確認しています。メーカーサポートにカメラを預けて再現性を確認し、そのうちファームウェアで修正したいと返答を受けていますが今のところ治っていません。ミラーレス一眼は制御が複雑なので、複雑なカメラほどバグを抱えている印象があります。特定の設定を避ければ問題はないので、気長に待ちます。(2023年10月14日に加筆)問題としていたのは、①マニュアル露出でEVF撮影時にDRを200、400にしていると半押しでAF駆動中になぜかEVFのスルー映像が明るくなってしまう現象。②ノスタルジックネガに設定して最初の1枚が変な色の写真になる現象。いずれもサポートで再現し、それぞファームウェアアップデートで解消しておりますのでご安心ください。

・カメラの性能が高いと、レンズにも欲が出る
「XF23mmF1.4 R」「XF35mmF1.4 R」「XF56mmF1.2 R」という解像感とボケ味、味わいに見た目のカッコよさまで備えたナイスな単焦点レンズトリオが手元にあったのですが、X-H2Sではレンズ側のAF駆動がボトルネックとして気になるように…。
カメラが進化するたびに初代レンズの「XF35mmF1.4 R」もAF駆動制御がどんどん良くなって、ストレスを感じづらくなっていたのですがさすがに「X-H2S」レベルに快適・快速なカメラボディになってくると、カメラのポテンシャルを発揮しきれていないのが気になってきます。
具体的には、より高精度化した瞳AFや、新たに搭載された被写体認識AFです。認識はしているのに、追い切れていないというのが撮影中、実際に撮影した結果からも感じとれます。
お気に入りのレンズではあったのですが、「XF23mmF1.4 R」「XF35mmF1.4 R」→「XF23mmF1.4 R LM WR」「XF33mm F1.4 R LM WR」に置き換えることにしました。ほんとは併用したい…でもそんな余裕はなかった。

新しいF1.4単焦点レンズで撮影した写真

XF33mmF1.4 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/850s
  • ISO: 640

35mm判換算50mmジャストになるように設定された、新生代の単焦点レンズの第二弾として登場した「XF33mmF1.4 R LM WR」。明らかに優等生な瑞々しい描写。

 

XF23mmF1.4 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 23mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/480s
  • ISO: 640

35mm判換算35mmとなる、新世代単焦点レンズの第三弾として登場した「XF23mmF1.4 R LM WR」。33mmと同じくAFが素早く静かで、防塵防滴性能も備えているためとても快適に撮影ができます。

 

XF23mmF1.4 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 23mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/2000s
  • ISO: 640

 

XF23mmF1.4 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 23mm
  • Aperture: ƒ/2.2
  • Shutter speed: 1/1900s
  • ISO: 640

「X-Pro3」でOVF撮影が快適にでき、スムーズなAF性能いを備えたコンパクトプライムシリーズの開放絞りF2レンズ群も揃えていたんですが、新しいF1.4単焦点レンズはサイズと重量以外は同じ強みを持っているため、旧F1.4単焦点とともに入れ替えしました。犠牲は多かった…。

 

XF23mmF1.4 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 23mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/2200s
  • ISO: 640

 

XF23mmF1.4R LM WR(ブラックミストフィルター装着)

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 23mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/1000s
  • ISO: 640

新世代のF1.4単焦点レンズは、旧レンズにあった良い意味での濁りというか味わいは失われているように思いますが、そもそもFUJIFILMのカメラはカメラ自体の画作りでノスタルジックさが強調できるので、そこまで喪失感は感じていません。シーンによってはブラックミスト系のフィルターをつけてあげると良いかも。

 

XF23mmF1.4 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 23mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/1500s
  • ISO: 1600

 

XF33mmF1.4 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/2900s
  • ISO: 320

ノスタルジックネガを試す。

 

XF33mmF1.4 R LM WR

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/13
  • Shutter speed: 1/2700s
  • ISO: 640

「XF23mmF1.4 R LM WR」「XF33mm F1.4 R LM WR」ともに、絞り込んだときの光条がめちゃくちゃ綺麗に尾を引いてくれます。絞り開放の性能が高いのでついつい絞りを開けた写真が増えがちですが、たまに光源をフレーム内に入れて絞り込んだカットを撮るのが面白そうです。夜景撮影などでも武器になりそうですね。

 

PENTAXのKマウントがメインで、現状はFUJIFILMはサブシステムのためまだまだ撮影カットが多くないですが、今後使い込んでいけたら良いなと思います。

以前は仕事で通用するカメラといえばフルサイズシステムでないとと考えていましたが、万が一サラリーマン人生を終えて、地元に帰って写真や映像で仕事をするようなことがあればX-H2SとX-H2の2台体制が良いかななんてあり得ない妄想をしてしまいます。

スタジオやブライダルなんかにも相性が良さそうな、とても魅力的なカメラです。おそらく動体撮影のために導入する方がほとんどだと思うのですが、まだそういう写真は撮れていません…。150-600mmとか気になりますね。買う算段もつかないですし、出番も限られるのでこれも妄想止まりです。

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