アマチュアである以上、別の本業や日々の生活が中心にある。カメラを手に取れる時間は限られているし、そもそも僕らには手が2本しか生えていないし、身体もひとつである。
それでも欲深き人間は、今日もサブ機運用について思いを馳せる…。
ということで、今回の記事ではレンズ交換式カメラのサブ機について書いていこうと思う。
そもそもサブ機とは
撮影者の数だけサブ機運用には幅がある。
・バックアップ
メイン機の不調時などに同等の運用が可能な可能なカメラ。同じ機種であることが好ましい
・撮影シーン別
例)風景を撮るときには高画素モデル、動きものを撮るときには高速連写モデル
例)大型センサーと小型センサーの組み合わせでシーンで使い分ける
・メイン機&サブ機
例)基本はメインのカメラで撮影するが、押さえのためにサブカメラを携行する
小型なカメラがサブに回るケースが多いように思う
etc…
他にも表現の違いや、撮影体験、その日の気分によって別のメーカーのカメラを使い分ける場合もあり、これが「レンズ沼」と合わせて写真・カメラ趣味を沼と言わしめる一つの理由になっていると思う。
もう一度言うが、僕たちの手は2本しかないにも関わらずである。仕事で「必ず撮らねばならない」わけではないけれど、僕らは常に来たるべき「持っててよかったサブカメラ」を味わうために今日も明日も“備えあれば憂いなし”を心掛ける。
Yuzu的サブ機運用の実例
若いときはとにかく一台カメラを手にいれるのにも精一杯で、一つのカメラですべてを賄うつもりで選んでいたけれど、徐々に感覚は麻痺してしまうもの。会社の成長や社会的な地位の向上によって大人な僕たちの“与信”という名の力は膨れ上がり、もうクレジットカードやローンで「どこまで買えるか…行けるところまで行ってやるzeeeeee!」というバーサーカーモードになる人も多いんじゃなかろうか。僕もその一人です。
Nikon D700 & D300s
初めての2台持ちをしたのがこの組み合わせ、フルサイズとAPS-C(Nikonで言うところのFXとDXフォーマット)の組み合わせだ。広角から標準域をD700、望遠域をD300sが担当していた。バッテリーグリップのMB-D10が共用で、同じくNikonのD3シリーズ用のバッテリーを挿入すると連写速度が向上。電圧向上によりシャッターレスポンスも上がるのか、シャッター音がとっても素敵になるというロマンチシズムに溢れていた。フルサイズ機なんて夢のまた夢だと思っていたNikonユーザーの多くに、フルサイズを身近に感じさせたNikonは偉い。
レンズは大三元(F2.8通し)ズーム3本を中心に小型単焦点を揃える。
Canon EOS-1D Mark IV & EOS 7D(& EOS 60D)
絶滅してしまった古のAPS-H(クロップファクター1.3x)とAPS-C(1.6x)を組み合わせた動体AF、望遠に強いシステム。APS-Hフォーマットが終焉を迎える空気を感じ取り、生まれて初めて「フラッグシップモデル」を背伸びして買ったのがきっかけ。なくなりそうになると欲しくなる、いなくなって初めてわかるアイツの存在のデカさ。(人間ってそういうところある)ここら辺で日本でも一眼動画のビッグウェーブがやってきて、バリアングル液晶のEOS 60Dまで買い足して、多分この辺から癒えることのない病にかかったと思う。カメラ屋に入社したときの最初の上司(フロアリーダー)の気の良いおじさんが言っていた、「カメラをやるならEOSは避けて通れないよ…」の一言が呪いのように僕を導いた。
レンズはフルサイズ小三元(F4通し)ズーム3本を中心に小型単焦点を揃える。
Canon EOS 5D Mark III & EOS 6D(& OLYMPUS PEN E-P5)
一つ前のAPS布陣を楽しんでいたときに、世の中は「フルサイズ戦国時代」に入っていることをふと思い出し、システムを刷新。(ポリシーとかないんかい)先代のEOS 5D Mark IIが当時としては高画素・低レスポンスなモデルであったのに対し、EOS 5D Mark IIIはバランス重視なのが好印象で(ほら、ガンダムの主人公機って特化型よりもバランス型のイメージあるし)購入した。その後、Carl ZeissのPlanar 1.4/50 ZEを購入してマニュアルフォーカスを楽しもうとしたところ、ファインダーが素通し感ありすぎてピントが掴めず、ファインダースクリーンの交換が可能なEOS 6Dを購入し、スーパープレシジョンマットスクリーン(F2.8より明るいレンズ向けのピントの山が掴みやすいタイプ)を装着。マニュアル専用機として楽しむ。
そしてなんとなくカメラの貼革というやつに興味が湧き、PEN E-P5を買って着せ替えたりした。
レンズはフルサイズ大三元(F2.8通し)ズーム3本を中心に小型単焦点を揃える。
Canon EOS-1D X(サブ機なし)
そんなにいろんなカメラうまく使い分けできるかい!!!と自分に憤り、すべてを手放して集約した天下のCanonのフラッグシップモデル。とても満足感の高いカメラであったが、長女の保育園の参観日に連写音で妻(当時)に白い目で見られ、帰り道にうっかり娘の頭にカメラのカドをぶつけてしまい、銃火器のようなカメラを構えられるのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ(謎)のような心持ちになり、覚悟が足りていなかったので手放すことになる。
レンズは大三元(F2.8通し)ズーム3本を中心にL単焦点、SIGMA Artレンズを揃える。
Nikon D810 & D4S(FUJIFILM X-Pro2)
懲りずにまた買ってしまった。でもメーカーが変わったからノーカウントという今でいうところの「カロリーゼロ理論(サンドウィッチマン)」に近い理論で武装していたように思う。D810からNikonの肌の色合いがマゼンタ傾向となり、好ましくなったという話をカメラ屋のバイヤー時代に商談で聞き、発売後即購入した。次いで、D4Sも現れた。もうこの辺から勢いがつき過ぎて「慣性の法則」によって自走していたので当時の意思や記憶も曖昧だけど、憧れのフルサイズ機で「高精細画質 & 高速連写・高感度」の二台巨頭を手にした高揚感は忘れられない。
さらに魅力的な新システムであるFUJIFILM Xシステムが気になりX-T1 グラファイトシルバーを購入したところ、二ヶ月後にX-Pro2が発売。これは買わないわけにはいかないということでX-T1から買い替えた。
Nikonレンズは大三元(F2.8通し)ズーム3本を中心に小型単焦点を揃え、FUJIFILMは大口径単焦点レンズ中心で揃える。
(加筆)後から思い出したが、この時にNikon DXフォーマットフラッグシップ5年ぶりの再来D500も手にしていたことを思い出す。(過去記事)ドバイでヘリに乗って上空から撮ったりした。今では考えられないアクティブさ。記憶が薄れてたけどD500用のレンズシステムも組んでたっぽい。もはや思考ではなく反射でシステム構築をしていて、まるでブルーロックの主人公、潔与一(いさぎよいち)が覚醒したフロー状態のよう。「やだ、自分が怖い…」
Canon EOS 5D Mark IV & EOS 5DsR
この頃は新しい症状が出ていて、身体の一部のようにカメラの操作や使用感が馴染んでくると他のカメラが欲しくなってしまう、いわゆる「新しい刺激中毒性・目移り症候群」と診断された。またNikonからCanonへの大引越。このときは冷静ではなかったので家から高速バスでダンボール二箱分の荷物を高速バスで都内のカメラ専門店に持ち込み、100万円分売って200万円分のCanonシステムを買って帰るみたいな太客ぶりを発揮した。(脳内麻薬ドバドバである)動画に強く、AFシステムもEOS-1Dシリーズのモジュールのローコスト版を採用してかなり使い勝手の良かったEOS 5D Mark IV。そして高画素かつEOS初のローパスキャンセルモデルであるEOS 5DsRで「バランス重視 & 高精細画質」のコンビが完成した。でも、EOS 5DsRの繊細な画が良い意味でCanonっぽくてそっちのほうが気に入っていた印象。
ここまできてやっと僕は気づいた。「目的のない複数台持ちは持て余す」
レンズはF2.8通しの超広角、標準と、100-400ズームの3本を中心に、SIGMA Artレンズを揃える。
SONY α9 & PENTAX K-1(シルバー)
この辺りで、レスポンスや動体性能では一眼レフに譲っていたミラーレスを躍進させるSONY α9が発売。ついにここまで来たかと感慨深い気持ちになりSONYデビュー。G Master、Carl Zeiss、Gレンズとあれやこれやに手を染めた。最初はシューティングゲーム感覚で楽しめていたのが、そのうち乾いた撮影感覚に戸惑いを感じ始める。それとともに色々あって転職を決意し、カメラメーカー某社へ転職。PENTAX K-1とFA Limitedレンズを2本からPENTAXユーザーの仲間入りを果たす。
ここで撮って出しで表現を完結させる楽しさ、一眼レフカメラならではの楽しみを強く感じることができた。
SONYはF2.8通しの超広角、標準と、100-400ズームの3本を中心に単焦点レンズを揃え、PENTAXは大三元(F2.8通し)ズームとFA Limitedレンズを揃える。
PENTAX K-1 改(シルバー) & SONY α7R IV & FUJIFILM X-T4(ブラック)
いよいよPENTAXがメイン機材に。α7R IVが出たのでとりあえず最新のものを買おう的な乾いたテンションでα9から買い替え。そして血迷って再度FUJIFILMデビュー。この3システムを振るいにかけた結果、PENTAXとFUJIFILMを使い続ける方向性が決まった。この頃はもう何考えてるか自分でもよくわからない。PENTAX K-1 Limited Silver Editionが基盤交換サービスで中身はK-1 Mark II相当に進化。
レンズもそれぞれ色々あって使い切れず…、後から思ったのは「トリプルマウントは留守番システムへの罪悪感がすごい」
PENTAX K-1 Mark II(ブラック) & K-1 Mark II(シルバー) & FUJIFILM X-T4(ブラック)
怖いことにこの辺りから「気入ったカメラは色違いで持つ病」まで発症しています。PENTAXは同一機種をもつことで操作性の統一ができ、とてもストレスが減りましたがこの頃は某写真家さんとの親交が深まり撮影ごとにカスタムイメージの詳細設定とホワイトバランスと露出を目まぐるしく調整するスタイルとなり、二台持ちでも設定の統一が追いつかなくなりました。近距離通信で設定が同期されれば良いのに…。そしてそろそろ例のAPS-Cフラッグシップの影が迫ってきて、資金調達のため一旦K-1 Mark IIは一台に整理。「ダブルマウントでちょっと気持ちもすっきり」
PENTAX K-3 Mark III(シルバー) & K-3 Mark III(ブラック) & K-1 Mark II(シルバー) & FUJIFILM X-T4(ブラック) & X-T4(シルバー) & X-Pro3(DRブラック)
待望のK-3 Mark IIIが発売されたので、一旦KマウントレンズもAPS-C特化に大幅入れ替えすることに。K-3 Mark IIIはシルバーから順当にブラックを買い足し、色違い良いねとなって仕事で対談動画を収録する必要がありX-T4の色違いと、X-Pro3も買い足す。
PENTAXはAPS-C大三元ズーム3本を中心に、大小望遠ズーム、DA、FA Limitedレンズコンプリート。「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ。マウントが減ったのにカメラが増えた、何を言っているとわからねぇと思うが…(以下略)」
PENTAX K-3 Mark III(シルバー) & J limited 01(LX75チタン) & FUJIFILM X-Pro3(DRシルバー) & X-Pro 3(ブラック)
動画の仕事がひと段落したのでFUJIFILMを趣味性に振り切り、X-Pro3を買い替え、買い足し。さらにOVF撮影をメインにするためにF2単焦点やVoigtlander NOKTON 35mm F1.2などにも手を出す。PENTAXはAPS-C用高倍率ズームが増え、フルサイズはFA LimitedとDFA★50mm、85mmといった単焦点特化型へシフト。
PENTAX K-1 Mark II & PENTAX K-3 Mark III(ブラック) & K-3 Mark III Monochrome & FUJIFILM X-H2S & X-Pro3(DRシルバー)
思うところあって(黒いカメラがなんやかんやかっこいい的な)K-1 Mark IIとK-3 Mark IIIをそれぞれ新品でブラックに買い替え、さらにFUJIFILMはX-H2Sがやってきた。もう買ったとかじゃない、やってきた。(意思の向こう側)X-H2Sに合わせて単焦点レンズを最新世代のものに総入れ替え。撮影スタイルとメーカー由来の表現の違いから、適度にPENTAXとFUJIFILMを行き来する好循環が生まれる。
しかし、FUJIFILM内でミラーレスらしい撮り方のX-H2Sと、ハイブリットビューファインダーを備えるゆえにOVFを使いたくなるX-Pro3の撮影スタイルとテンションの差が浮き彫りになる。
一方で、同じ操作感と姿でカラー・モノクロ(しかもモノクロ専用機)と使い分けるK-3 Mark IIIコンビの魅力が際立ち、同じ駆体にフォーマットは同じながら異なる特性のセンサーが入ったカメラの使い分け最高!!という気持ちになる。
そして現在に至る…
仕事のブツ撮りや、プライベートで気持ちの入った撮影はPENTAX K-1 Mark IIが担っているものの
PENTAX K-3 Mark III & K-3 Mark III Monochrome「カラー & モノクロ」
FUJIFILM X-H2 & X-H2S「高精細画質 & 高速連写・動体性能」
というダブルサブシステム(英語力皆無)が完成したのであった。
近々それぞれのコンビごとにレビューしてみる。
コメント
最初は普通のハイアマチュアの方の機種紹介かと思いましたが、読み進めていくうちにカメラの悩みを解決するための実践?革命?アナーキズム?記だと理解しました。リスペクトします。子供の頭にカメラぶつけて悩むのはあるあるですね。いろいろ最高です。
がんまさん
コメントありがとうございます、行き当たりばったりな性格なので散財・遠回りしながら感じてきたことを書き殴ってみました!子供の頭にカメラぶつけたときには、自分はなにをやってるんだと思い悩みましたね…。
>いろいろ最高です。
ありがとうございます、励みになります!