FUJIFILMのニュースタンダード「XF33mmF1.4 R LM WR」

レビュー

FUJIFILMには「XF35mmF1.4R」と呼ばれる神レンズがあります。

二度のFUJIFILM Xシリーズユーザー人生のなかで、一番装着頻度の高いレンズでした。

切れすぎないやさしい解像感と、ボケ味。そしてなんとも言えない光の質感が写ってくる素敵なレンズです。2012年にX-Pro1が発売されたときに、一緒にリリースされた3本の単焦点レンズのなかの1本で、つい最近まで毎年一番多く販売されているレンズであるとメーカーのインタビュー記事で読みました。

たしかにこのレンズは、Xシリーズユーザーを迎え入れる受け皿であり、カメラの画作りとあわせてXシリーズらしさを感じさせる名実ともに“標準レンズ”。マスターピースと言っても過言ではありません。

そんななか、2021年にFUJIFILMから新しい標準レンズが発売されました。それが「XF33mmF1.4 R LM WR」です。製品ページを見ると“神話は第二章へ”と銘打たれており、このレンズにかけるFUJIFILMの想いが感じ取れます。

当初は非常にリーズナブルなシステムであったFUJIFILM Xシステムですが、実売価格で10万円ほどと立派なお値段。ただし、昨今は各カメラメーカーがフルサイズミラーレス一眼に注力しており、高性能な単焦点レンズは20〜30万円台の値がついていますので、それらと比べてしまえば流石はAPS-Cフォーマットに注力したシステムだなと買わない理由がなくなってきますよね。(自己暗示)

X-T4とX-Pro3でFUJIFILMに再デビューした際には、「XF35mmF1.4R」がレンズの中核であった僕ですが、X-H2Sを入手したことによって事情が変わってきました。

X-H2Sは、顔認識・瞳AFだけでなくFUJIFILMでは初となる、各種の被写体認識AFが搭載されました。動物・鳥・電車・飛行機・車・バイク/自転車です。(ファームアップでVer.3.00になってからは、「鳥」に設定していると「昆虫」、「飛行機」に設定していると「ドローン」までも認識するそうです。すごい)

この被写体認識系AFですが、AF-Sでワンショットで撮るぶんには良いのですがAF-Cでピントを合わせ続ける際にはファインダー上は被写体をしっかり認識していても、レンズ側のAF駆動が遅いがために微妙にAFを外したりします。

SONYのαシリーズを使っていたときには、基本的にAFが遅いレンズはほとんどないのでこういう問題は起きなかったのですが、FUJIFILMの初期の単焦点レンズはAF駆動をDCモーターで行なっているものが多く、AF駆動のなめらかさやスピードの面で課題を抱えています。

それでもカメラ側が新しくなるにつれてファームウェアのアップデートでAF測距のリフレッシュレートが上がったりして、ストレスを感じるほどの合焦スピードではなくなっていたと思います。

つまりXシリーズのカメラも5世代目となり、カメラが進化しすぎたんですね。X-H2Sに「XF35mmF1.4R」を装着して撮影したときに、そんなカメラとレンズのジェネレーションギャップを感じてしまいました。

僕がX-H2Sを導入していたときにメインで使っていたXマウントの単焦点レンズは「XF23mmF1.4R」「XF35mmF1.4R」「XF56mmF1.2R」の3本。当時はまだ56mmはリプレイスされていなかったので、ひとまず「XF23mmF1.4R」「XF35mmF1.4R」の2本をメインに置き換えを検討します。

ただし、悩ましい点も残っています。それは、“FUJIFILMらしさ”が感じられるかどうか。描写面でもそうですし、撮影体験も大事です。世の中に出ているレビューを見てみると、双方ともに「高速・高精度なAF」「優等生になった描写」「信頼の防塵防滴」といったアピールがされており、レンズ描写味わい的なものが残っているようには感じられません…。

しばらく大いに悩んではいたのですが、日頃PENTAXの一眼レフカメラで「FA Limitedレンズ」ばかり多用しているのでレンズの味わい的なものが理解できるようになった僕ですが、本来はカリカリシャープなレンズが好きだったのを思い出しました。(物欲に忠実な思考回路をしています)

モノは試しと「XF33mmF1.4 R LM WR」「XF23mmF1.4 R LM WR」を一緒に迎え入れました。

XF33mmF1.4 R LM WRで写真はどう変わる?

「XF35mmF1.4R」に比べて、2mmだけ焦点距離が短くなることで、35mm判換算50mmの画角となりました。正直画角の違いはわかるようなわからないような感じ。笑

こういうのは僕程度のアマチュア写真愛好家には、同じ場所で撮り比べて比較してやっと実感する違いでしょうか。最短撮影距離も「XF35mmF1.4R」の28cmに対して30cmですが、その辺も使い勝手には差を感じません。では実写を紹介していきます。

とりあえず散歩しながら試し撮り

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/6400s
  • ISO: 200

最短撮影距離は30cmですので、一般的なフルサイズ向けの50mm(最短撮影距離は40〜45cmがベーシック)と比べると随分寄れます。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/750s
  • ISO: 160

はい、後ボケの品が良いよ!良いよ!

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/3200s
  • ISO: 800

こういう二線ボケしやすい被写体はどうでしょう。右上の周辺部は若干目につきますが、背景がグレーのあたりは溶け込むような感じ。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/1250s
  • ISO: 160

開放でピントの部分がシャキッとしているおかげで生まれる立体感、これですね。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/240s
  • ISO: 160

明暗差と反射した葉っぱのハイライトの感じを見比べてみました。いい感じ。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/6400s
  • ISO: 200

子供を撮ってみる

試し撮りして「やっぱり違った…」とならなくて良かったです!正直なところ、僕にとっては完全に「XF35mmF1.4R」の正統進化。ピント位置の解像感になだらかなボケ味によって、フォーマットを超えた立体感、奥行き感を感じさせるレンズに思いました。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/400s
  • ISO: 800

耳の産毛が写る。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/300s
  • ISO: 320

リッチな陰影。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/320s
  • ISO: 640

撮影距離で望遠レンズっぽく。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/125s
  • ISO: 1250

ちょっとお兄ちゃんになってきた3歳児。

 

  • Camera: X-Pro3
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/1000s
  • ISO: 640

ロマンスカーミュージアムで展示車両を堪能する。(乗ったり降りたり何十往復したことか…)

 

  • Camera: X-Pro3
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/220s
  • ISO: 640

座席の隙間から良い表情を射抜く。こういうときはフレーミングが済んだらファインダーからちょっとだけ目を離して、カメラ越しにいないいないバァ!で顔を見せてあげる要領で撮ると、とっても良い顔してくれます。

 

  • Camera: X-Pro3
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/1000s
  • ISO: 400

後ろ姿。

ただし、悩ましい点も残っています。それは、“FUJIFILMらしさ”が感じられるかどうか。描写面でもそうですし、撮影体験も大事です。

まったくの杞憂でした。FUJIFILMらしい写真をしっかりと描いてくれながら、AF-Cでの被写体追従に、被写体認識系のAFもばっちり。最強。

スナップ的な

  • Camera: X-Pro3
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.6
  • Shutter speed: 1/1100s
  • ISO: 500

川越の土産物屋さんの店頭。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/3500s
  • ISO: 320

初めて使った「ノスタルジックネガ」。

 

  • Camera: X-Pro3
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/17000s
  • ISO: 200

通勤途中のノスタルジー。

 

  • Camera: X-Pro3
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/2500s
  • ISO: 200

これもなんとなくノスタルジック。朝の光ですが夕方のチャイムが鳴ってそう。

 

  • Camera: X-Pro3
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/950s
  • ISO: 200

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/32000s
  • ISO: 320

立体的な雲。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 23mm
  • Aperture: ƒ/2.8
  • Shutter speed: 1/300s
  • ISO: 640

改装中のお店。

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/600s
  • ISO: 3200

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/600s
  • ISO: 3200

 

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/110s
  • ISO: 3200

まとめ

買えない理由が金銭的な理由でなければ、迷う必要はなさそうです。
迷わず行けよ、行けばわかるさ。

  • Camera: X-H2S
  • Focal length: 33mm
  • Aperture: ƒ/1.4
  • Shutter speed: 1/4s
  • ISO: 1600

 

 

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